『オリーヴ・キタリッジの生活』 ハヤカワepi文庫
2021年4月8日 本 コメント (2)
エリザベス・ストラウト 著
小川高義 訳
『オリーブ・キタリッジの生活』を読んだ。
これも翻訳の巧さに助けられてストレス無しで読み進めた。
薬局
上げ潮
ピアノ弾き
小さな破裂
飢える
別の道
冬のコンサート
チューリップ
旅のバスケット
瓶の中の船
セキュリティ
犯人
川
作品は全13篇からなる。
全篇にオリーヴ・キタリッジが主人公として登場するわけでもない。
「薬局」「上げ潮」「ピアノ弾き」の中ではほんの端っこに彼女の姿が見え隠れしているだけ。
悪妻だし、教師としても何だかイマイチだし、一人息子を溺愛、どんな嫁も気に入らない、彼女にとっては気にくわない人間ばかりだし、こき下ろし名人、心の中ではしょっちゅう誰かに悪態をついているし、謝ったことがないし、他人に対して素直だとも言い難い癖の強い女性だけれど、自分に嘘をつかない本当の正直者とは彼女のような人のことだろう。
後半の「チューリップ」を境に彼女は自身の老いを感じ、戸惑っているように見える。
読み進むうちに彼女の人間像と存在が徐々に見えてくる。
第一印象は悪いけれど、時間を経れば自分(読み手)も相手も変わって理解し合えることは往々にしてあることだ。
彼女は言った、
「いいことばっかりじゃないのよ。その年になって、わかんないの?」
共感するわ〜、(当たり前のことだけれど)。
善悪取り混ぜての人生だもの。
全てに善き人がいないのと同じように全てに悪の人もいない。
そんな相手の底流に存在するモノに気づけば、
歳を重ねることも悪くないと思える^^
中でも孤独について語るには重ねた年月が必要だな、と強く思った。
興味深く読んだのは「セキュリティ」と「川」。
ふふふと独り笑いしたり、しんみりしてしまったりしながら読んだ。
全編苦みばしっている(笑)
かっこいい苦味ばしりではなくて甘さがまったくないという意味で。
でも、苦味にも慣れてくればそれなりの(美味深さと言うより)滋味深さを覚えて止められなくなる、そんなお味の作品でした。
小川高義 訳
『オリーブ・キタリッジの生活』を読んだ。
これも翻訳の巧さに助けられてストレス無しで読み進めた。
内容
(「BOOK」データベースより)
アメリカ北東部にある小さな港町クロズビー。一見何も起こらない町の暮らしだが、人々の心にはまれに嵐も吹き荒れて、いつまでも癒えない傷痕を残していく―。住人のひとりオリーヴ・キタリッジは、繊細で、気分屋で、傍若無人。その言動が生む波紋は、ときに激しく、ときにひそやかに周囲に広がっていく。人生の苦しみや喜び、後悔や希望を静かな筆致で描き上げ、ピュリッツァー賞に輝いた連作短篇集。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ストラウト,エリザベス
1956年にメイン州ポートランドで生まれる。第一長篇『目覚めの季節エイミーとイザベル』(1998)でオレンジ賞とPEN/フォークナー賞の候補となり、“ロサンゼルス・タイムズ”新人賞および“シカゴ・トリビューン”ハートランド賞を受賞。第二長篇Abide with Me(2006)を経て、2008年に発表した『オリーヴ・キタリッジの生活』は全米批評家協会賞最終候補となり、2009年度ピュリッツァー賞(小説部門)を受賞した
薬局
上げ潮
ピアノ弾き
小さな破裂
飢える
別の道
冬のコンサート
チューリップ
旅のバスケット
瓶の中の船
セキュリティ
犯人
川
作品は全13篇からなる。
全篇にオリーヴ・キタリッジが主人公として登場するわけでもない。
「薬局」「上げ潮」「ピアノ弾き」の中ではほんの端っこに彼女の姿が見え隠れしているだけ。
悪妻だし、教師としても何だかイマイチだし、一人息子を溺愛、どんな嫁も気に入らない、彼女にとっては気にくわない人間ばかりだし、こき下ろし名人、心の中ではしょっちゅう誰かに悪態をついているし、謝ったことがないし、他人に対して素直だとも言い難い癖の強い女性だけれど、自分に嘘をつかない本当の正直者とは彼女のような人のことだろう。
後半の「チューリップ」を境に彼女は自身の老いを感じ、戸惑っているように見える。
読み進むうちに彼女の人間像と存在が徐々に見えてくる。
第一印象は悪いけれど、時間を経れば自分(読み手)も相手も変わって理解し合えることは往々にしてあることだ。
彼女は言った、
「いいことばっかりじゃないのよ。その年になって、わかんないの?」
共感するわ〜、(当たり前のことだけれど)。
善悪取り混ぜての人生だもの。
全てに善き人がいないのと同じように全てに悪の人もいない。
そんな相手の底流に存在するモノに気づけば、
歳を重ねることも悪くないと思える^^
中でも孤独について語るには重ねた年月が必要だな、と強く思った。
興味深く読んだのは「セキュリティ」と「川」。
ふふふと独り笑いしたり、しんみりしてしまったりしながら読んだ。
全編苦みばしっている(笑)
かっこいい苦味ばしりではなくて甘さがまったくないという意味で。
でも、苦味にも慣れてくればそれなりの(美味深さと言うより)滋味深さを覚えて止められなくなる、そんなお味の作品でした。
コメント
ドラマは癇癪がちょっと気になったかな。
本の方は、自分の日記探したら、
『お天気の悪い日曜日に。
素敵な作品だと思うけれど
何だかさびしくなる。』
ですって。2014年だから歳を取ることがまだ自分の肌に馴染んでなかったのかしらw
続編が出たんですよねー。『オリーヴ・キタリッジ、ふたたび』
そのうちに読もうかと思っていますが、ちょっとお高いので、古本が出たらかしらん。
> 『お天気の悪い日曜日に。
素敵な作品だと思うけれど
何だかさびしくなる。』
たしかに、オリーヴと同じ年代にならないと共感するのは辛いかも知れませんね。
私など何度頷いたことか(笑)
私も続編を読みたいのですが、価格の面で折り合いがつかず^^ 図書館かなぁ。