魂の手入れをしなくては!! 『魔利のひとりごと』ちくま文庫
森茉莉 著
佐野洋子 画
2011年 第一刷発行
元々は昭和39年1〜12月の「新婦人」に連載されたもの。

茉莉だけれど、タイトルは魔利です。


森茉莉はかの文豪森鴎外の愛娘だ。
フランス暮らしで培われたものなのか、それとも生まれつきの、
父親から受け継がれた感性なのかわからない。
けれども、彼女の書く文に漂う独特の雰囲気、
言ってみればお育ちの良いお嬢さまは
何を言ってもふんわりしているし、
美意識がとんでもなく高く、
何もかもが上質。
石鹸の思い出ひとつとってみても
彼女の場合は石鹸ではなくて、シャボンでもなくて
サヴォンだ。
彼女によると、石鹸とは銭湯の薄気味悪いタイルの上を流れて行く安石鹸のかけら。時には台所にたわしと並んで水膨れしている洗濯石鹸… …薄黒い亀裂(ひび)の入った石鹸なのだ。上等の石鹸は決して浮かんでこない。

何の悪びれもなくこんな風に言えるのだから、
ちょっとスケールが違いますね、
なんて思ってしまって
現実逃避したい時に読みたいな〜、などと思うのだが。

でもでも、違う。
過去のお嬢さまの少女趣味でもなく、
彼女しか使いこなせない言葉で私の前に決して軽くはないものを差し出してくれる。
一度読んだだけではそれには気づかないけれど。
三度目くらいに、ああそういうことだったのか!
彼女は芯から上質なのだと思う。

と言っても、これと『贅沢貧乏』しか読んでないのですけどね(大笑)

この本には12篇のエッセイが詰まっている。
そのエッセイを、あの大好きな佐野洋子のイラストが飾っているのだから、
もぉ〜素敵!!

中でも
「海から生まれた真珠」
「時刻(とき)の翼」
「奥さんとお内儀さん」(女将さんではなくてお内儀さんです)
はすごくいいです。

裏表紙に
 
私は森茉莉から沢山のものを学んだ。幸せで美しい世界は存在するものではなく、自分で勝手に創り出すものである、もうそれは、事実がどうであれ強引に創り出すものであって、それが出来る魂を大切に手入れをしなくてはいけないという事であった。
(佐野洋子)


まさにそう!
森茉莉も佐野洋子も、
まさにそれを実行した人だと思う。


今日は三人目の孫娘の一歳の誕生日だった。
キューバへ行く乗り継ぎのトロントで、今入院した、と知った。
予定より2週間早かった。
ハバナについて、真夜中だったけれど、wifiないからデータローミングなるものを初めてやってみた。
繋がったら、new baby girlの顔が見えた。
あっという間にもう一歳!


ほんと!
「時刻の翼」は、すぐに過去になってしまうね。







コメント

ありす
2019年10月8日10:36

茉利さんのその美意識が、自分以外の他人の生活にも注がれたらもっと良かったよなぁ、とついつい思ってしまう私です。


hana
2019年10月9日23:55

ありす姐さん^^

確かにおっしゃる通りかも。
その辺りはお嬢さん気質が抜けなかったからかもしれませんね。
何と言っても、「贅沢貧乏」、洋子さんが言うように「事実がどうであれ強引に創り出すものであって...」ですから。
もう一度「贅沢貧乏」読んでみます^^

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