最後には解った気分^^ 『「他者」の起源』 集英社新書
2019年9月19日 本
『「他者」の起源 ノーベル賞作家のハーバード連続講演録 』
著者:トニ・モリスン
解説者:森本あんり
訳者:荒このみ
トニ・モリスンがアメリカの黒人女性として初めてノーベル文学賞を受賞したことは知っていた。
彼女がこの8月に88歳で亡くなったこともニュースで知った。
そんなタイミングで本屋に行くと新書の棚にこの本が並んでいた。
亡くなったからかと思ったけれど、この新書の発行は今年の7月22日。
亡くなる1ヶ月ほど前だ。
タイトルに興味があって買ったけれど、私にとって中身はなかなか難解で読み直してもよく理解できない箇所がいくつもあった。
でも、この本の帯に
「人はなぜ『差別』をやめられないのか。」とある。
子どもでも考えるような単純な疑問だけれど、
大人にも説明できない底深い疑問だ。
その疑問、人はどんなふうに人種差別主義者になるのだろうか?
確かに、
アメリカの警官が、白人に対してすることはないのに、交通違反くらいで殴ったり時にはすぐに銃を出して撃ったりする光景は何度も見たことがある。それがまかり通っているのだ。
理解せぬままに読み終えた( 残念!)
しかし、巻末にある訳者解説が素晴らしく
トニ・モリスンとアメリカ社会を語ってくれて理解は一気に深まった(感じ^^)
アフリカン・アメリカン(アメリカの黒人)とアフリカ人(黒人)の違いは大きい。
これ、目から鱗 ↓
肌の色が何だ!と言っても通用しないですね。
黒い肌がどうのではなくて、「一滴の血」↓
これはアイデンティティーを捨てることになるのか? ↓
等々、挙げるときりがない。(もっと、書き残しておきたいが)
ともあれ、モリスンが:
アメリカ社会の白人も黒人奴隷という「アフリカニスト・プレゼンス」があって初めて、自分の存在理由を確立していると主張します。
という解説は
衝撃的な指摘だと思う。
訳者解説様サマ!!
著者:トニ・モリスン
解説者:森本あんり
訳者:荒このみ
トニ・モリスンがアメリカの黒人女性として初めてノーベル文学賞を受賞したことは知っていた。
彼女がこの8月に88歳で亡くなったこともニュースで知った。
そんなタイミングで本屋に行くと新書の棚にこの本が並んでいた。
亡くなったからかと思ったけれど、この新書の発行は今年の7月22日。
亡くなる1ヶ月ほど前だ。
タイトルに興味があって買ったけれど、私にとって中身はなかなか難解で読み直してもよく理解できない箇所がいくつもあった。
でも、この本の帯に
「人はなぜ『差別』をやめられないのか。」とある。
子どもでも考えるような単純な疑問だけれど、
大人にも説明できない底深い疑問だ。
その疑問、人はどんなふうに人種差別主義者になるのだろうか?
p.22 奴隷が「異なる種」であることは、奴隷所有者が自分は正常だと確認するためにどうしても必要だった。人間に属する者と絶対的に「非・人間」である者とを区別せねばならぬ、という緊急お要請があまりのも強く、そのため権利を剥奪された者にはでなく、かれらを創り出した者へ注意は向けられ、そこに光が当てられる。たとえ奴隷たちが大げさに語っていると仮定しても、奴隷所有者の感覚は奇怪きわまりない。まるで、「俺はけだものじゃないぞ! 俺はけだものじゃないぞ! 無力なやつらをいじめるのは、俺さまが弱くないってことを証明するためさ」と吠えているようだ。「よそ者」に共感するのが危険なのは、それによって自分自身が「よそ者」になりうるからである。自分の「人種化」した位置を失うことは、神聖で価値ある差異を失うことを意味する。
確かに、
アメリカの警官が、白人に対してすることはないのに、交通違反くらいで殴ったり時にはすぐに銃を出して撃ったりする光景は何度も見たことがある。それがまかり通っているのだ。
理解せぬままに読み終えた( 残念!)
しかし、巻末にある訳者解説が素晴らしく
トニ・モリスンとアメリカ社会を語ってくれて理解は一気に深まった(感じ^^)
アフリカン・アメリカン(アメリカの黒人)とアフリカ人(黒人)の違いは大きい。
これ、目から鱗 ↓
p144 確かにバラク・オバマは、肌の色の黒いアメリカ国籍のアメリカ人でした。ただし、一般の「アメリカの黒人」とは決定的に異なる点がありました。
オバマの父親は黒人でしたが、アフリカ大陸に生まれ育ったケニア人でした。アメリカ合衆国の元奴隷を先祖に持たないという点で、オバマは一般のアフリカン・アメリカンとは、決定的に違っていたのです。それこそ同じ土俵に立っていないのです。だからこそは白人社会も黒い肌のオバマを受け入れやすかったのかもしれません。オバマは、結婚相手にミシシェルという、シカゴの貧民街サウスサイドで生まれたアフリカン・アメリカンを選びました。ミシェルは黒人ゲットーの出身でしたが、頭脳明晰、成績優秀で自分の道を切り開き、高等教育を受けて専門職に就いた人です。ミシェルのおかげで、オバマは黒人社会にも比較的たやすく受け入れられていったのでしょう。
肌の色が何だ!と言っても通用しないですね。
黒い肌がどうのではなくて、「一滴の血」↓
p.146 「アメリカの黒人」は、かならずしも肌の色が黒い人を意味するのではありません。
いわゆる「一滴の血」という歴史的に認められた法的根拠によって、アメリカ合衆国では黒人の血が一滴でも入っていれば、黒人というカテゴリーに入れられてきたのです。そのため中には肌の色の薄い、すなわち白人の血がたくさん入っている人で、一見、白人にしか見えない人びとがいます。それでもかれらは先祖をたどり、どこかに黒人の先祖が入れば、その人は黒人と見なされています。それは、21世紀の今日のアメリカ社会においても通用している了解事項です。
これはアイデンティティーを捨てることになるのか? ↓
p.152 肌の色は白くても、アイルランド系であったり、ユダヤ系であったりすれば、かれらもまた社会的差別を受けていました。1960年代に入っても、ユダヤ系アメリカ人でさえホテル予約が取りにくかったり、さげすみの目で見られたりという経験をしています。
ハリウッドの俳優の中にはユダヤ系も多く、カーク・ダグラスしかり、トニー・カーティス然り、ローレン・バコールしかりです、アメリカ社会に受け入れられるために、かれらのように英国風の名前に変えている人たちがたくさんいます。
p.153 肌の色が白いロシア人、ポーランド人、イタリア人などは、やがて肌の色によってカテゴリー化され、白人の分類に納まり、お互いに違和感を覚えずにアメリカ人になって行きます。それをモリスンは皮肉を込めて言っています。かれら東欧や南欧からの移民たちは、アメリカに渡って来ると、故郷では思いもよらなかったものになることが要請されると。自分が白人であることを意識させられるのです。それがアメリカ人であることの証なのですから。
等々、挙げるときりがない。(もっと、書き残しておきたいが)
ともあれ、モリスンが:
アメリカ社会の白人も黒人奴隷という「アフリカニスト・プレゼンス」があって初めて、自分の存在理由を確立していると主張します。
という解説は
衝撃的な指摘だと思う。
訳者解説様サマ!!
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