長い間、時間がなかったこともあるけれど、本を読むことがなかった。
手にするといえば専門書ばかりで、読むというより資料を探す、集めるばっかり。
そんなことをしている間に眼がすっかり……
で、半月ほど前に眼鏡を新調した。 6年ぶり。
新しい眼鏡がうれしくて、大学の図書館で本を数冊借りました。
適当に書棚から選んできた本の一冊を早速読み始めたら

目が点になりました(笑)


タイトルでチョイス。
『死にたくなったら電話して』 李龍徳(イ・ヨンドウ) 河出書房新社


 三浪生の徳山がキャバクラで出会ったキャバ嬢から、「死にたくなったら電話してください。いつでも。」とメモをもらうことから始まるお話。

 と、聞けば
自殺を思いとどまらせようとする「いのちの電話」みたいだけれど、
そうじゃなくて自殺にいざなうお話なのでした。
というか、一緒に死んでくれる相手を探していたのか?

 気がついた時には、否、気づかないうちに
すっかりひきず込まれていて
もう、死ぬしかないのかな?的気分です。
なんて考えてみれば恐ろしいけれど。
でも、ホラー感はないし、
著者は埼玉県生まれの在日韓国人三世で、早稲田の第一文学部出身なのに
この作品の舞台がどうして大阪なのか?←私としてはここが最大の謎^^


 [阪急梅田駅の広い構内で終電間際に聞く「第三の男のテーマ」が二人のBGMであったころ、これもまだ冗談か本気かわからないふうに曖昧に、表情のずっと豊かだった初美は言っていた。 「死ぬ、って別に、簡単な話です。泣いちゃうぐらい、————ああそうなんやね、と腑に落ちる話です」と輝く初美の裸体。「今夜寝て、そしてもう明日は起きなくていい。そういうの。おやすみなさい。もうなんにも心配せんでいいから。もう、そのあったかい寝床から出てこんでええ。悪い夢もみません。というか、どんな夢も見いへん。何も見たり聞いたりせん。もう新たな経験を肉体に痛く痛く刻むこともない。いや、怖くないですよ。怖ない怖ない。死んであの世の裁きなんて絶対にないから。誰もどんな説も信じられへんのやったら私の言葉だけ信じて受け取って、ただ眠るだけです。寝ましょう。安心して、ぐっすり寝ましょうよ。いったん寝てしまえばもう、誰も恨まず誰も妬まず、何も恐れず何も嫌悪せず、何ものからも、脅かされない。落ち込むことも、落ち込まされることもない。何も感じなくていい。これからはもう、なんにも、感じんでいいの。なんにも思い出さんでいい。未来の心配はない。未来そのものがない。過去の傷も綺麗に消える、すべての傷と、流された血がなかったことになる。歴史がなくなる。宇宙の法則がなくなる。すっかり無になる。素晴らしいことやないですか? この眠りの向こうの世界では、戦争もなければ病気もない、犯罪もなければ迫害もない。騙し騙される不安もない。裁きはない。ただもうぐっすりできる。−−—— ねぇ、もう休みましょう。こういうのに早すぎるなんてこと、ないですし、もう充分といえば、いつだって充分すぎるほどです」





 そうそう、目が点になったワケはというと……^^





コメント

lister
2015年7月28日12:10

梅田で流れていたのが「第三の男のテーマ」って初めて知りました(笑)

作者の恋人あるいは妻が大阪人かな。

それにしても怖ろしいお誘い。全然否定できない完璧なロジック。ああ、
こわ。

hana
2015年7月28日19:45

listerさん^^

私も初めて知りました(笑)京都線だけかな?神戸線や宝塚線はどうなのでしょうね?

>作者の恋人あるいは妻が大阪人かな。
 それもある可能性アリですが、内容的に関西弁の会話がこの作品を身近なモノというか読みやすくしているんじゃないかと感じました。

確かに、このロジック説得力ありますよね。

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