遠い昔にに読んだ『ライ麦畑でつかまえて』を
読む羽目に。
テーマをもらったのは11月の末だったけれど
その頃は図書館で資料を集めたりしていただけでした。
お正月休み明けに、かなり焦りだして本格的に遣り出したら
嵌ってしまった…
私の悪癖なんですが
嵌るととめどなく…
眠る時間が惜しくなり…。

原作はJ.D.SALINGER 『The Catcher in the Rye』 1951年
翻訳は野崎孝 『ライ麦畑でつかまえて』 1964年
同じく翻訳で村上春樹 『キャッチャー・イン・ザ・ライ』 2003年
の三冊を読み比べ。

専門でもないのに、この二週間
ひたすら三冊を前にレポート書いてました。
それにしても、読み比べがこんなに面白いとは。
何でもやってみるものですね♪

The Catcher in the Ryeを
『ライ麦畑でつかまえて』とした野崎氏のセンスは素晴らしいと思うばかり
さすがの春樹さんもこれを超える言葉が見つからなかったんだろうけれど、
それにしても『キャッチャー・イン・ザ・ライ』はぜんぜんイケテないというか
原題のままならキャッチャーの前にザがあるだろうし
それにライだけでライ麦畑って分かるのかな?
何か深い意味でも?
とかとか、この翻訳に関しては野崎派の私なので
ことごとく春樹氏の訳に注釈(ナンクセとも言う^^)つけてばっかり。
だって、野崎訳のホールデンの方がずっと若さを感じるのですもの。
春樹氏の彼は、たぶん野崎氏の彼より頭が良くて
読んでいて何だか語られることすべてを納得してしまうし、
あの彼が持っているイライラ感や伝わってこない。
片やあまり品のないやんちゃ坊やだとすれば
春樹氏のは春樹氏のイメージ通りいいとこのお坊ちゃま感で満ち満ちていました。

春樹氏のはもう翻訳の域を超えていて
確かに読みやすいけれど
あれ、超訳版ですね。
春樹流The catcher in the Ryeです。

春樹氏は春樹氏でした。
元々は翻訳者として作家活動を始めた方だから
上手いのは認めるけれど。(and allを「なんちゃって」、とあった。さすがです)
それに比べ野崎氏のは、当然ながら言葉遣いは古いし
今ならそのまま英語で通じるカタカナ単語を日本語にしているので無理も感じるけれど
私が一番感動するのは、あの時代にあの若者の言葉遣いをしているところ。
野崎氏も有名な翻訳家だけれど、ああいう言葉遣いをどうやって生み出したのかと
今回改めて考えたのだけれど、
資料集めした時にある本に書いてありました。
先年亡くなったコラムニストの植草甚一氏がその当時アメリカの通俗文化を『マンハント』という雑誌に紹介していて、野崎氏はそこからヒントを得たらしい、とあった。
そういう解釈はとてもよく分かる。
『マンハント』にはまだ無名時代の野坂昭如、大橋居巨泉、片岡義男、田中小実昌らが結集していたとあるし、1950代といえアメリカ文化が時代の先端だったのでしょうね。






コメント

いおり
いおり
2013年1月20日22:30

「赤毛のアン」の訳は村岡花子さんでないとしっくりこないとの同じような感覚ですね、きっと、、、(違うってー笑)

hana
2013年1月21日20:44

いおりさん^^

微妙…(笑)
村岡花子さんの『秘密の花園』もわくわくしながら読んだことを思い出しました。
今回思ったのは、当たり前ですが、原作読めればいい、です。
翻訳は創作とまで言われることもあるくらいですから、それくらいのつもりで読めばいいのかもしれませんね。

はにゃ。
2013年1月23日15:39

春樹氏の翻訳した小説、割に昔読みましたけど、春樹色が強いですよね。春樹っぽい。

思うんですけど、例えば英語を自分が使えると、英語の文章を読んた時にその英語を自分のイメージで捉えますよね?

だから、自分が書く日本語の文章と、英語を日本語に訳した文章って基本には自分という色が付いていると思うんですよ。

春樹さんは彼が日本語で書いた彼の小説を読む機会があるから、春樹だよなーって思ってしまうのかなと。私は海外ミステリが好きなのですが、訳者が変わるとトーンって変わりますもの。

当然春樹訳の方が全然しっくりくるよーって思う読者もいるのでしょうが、後は好みなのかなと。

hana
2013年1月24日17:52

はにゃ。さん^^

若い方には断然春樹氏訳が読みやすいでしょう。
私も先に春樹氏のを読んでいれば違った分析になったかも知れません。
英語力がないものだから、三冊読むのは大変で…(涙)
それに原作者自身のクセというか、単語の使い方もありますしね。
逆に春樹氏の作品のスペイン語訳を読んだことがあるのですが、既に春樹氏のイメージで読んでしまっていたので、当たり前ですがあの時は何の違和感も持ちませんでした^^
翻訳は訳者によって随分と違ってくるものだと今回実感しました。

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